俺様御曹司に飼われました
「ここだ……っと待った」



音哉に連れてこられた居酒屋の前。
扉に手をかけた音哉がその手を引っ込める。



「……音哉?」


「あそこ」



右手に見えるトイレへと続く廊下。



「……あ」



壁に寄りかかって、スマホの画面を見つめる悪魔がいた。



「スマホみて、お前に電話とか?」


「さぁ?見てるだけじゃない」



優しい顔をして、スマホを操作してる悪魔。
悪魔の目の先には何が映ってるのか、想像できた。

多分、あの待受けの写真以外にも彼のスマホにはあたしに似た子との写真があるに違いない。



「……やば」



ちらっとこちらを見たような気がした悪魔に、早足で階段まで行く。
階段のところを少し降りれば、悪魔のいる位置からは死角になる。



「トイレも入らないでなにしてんだろ」


「さぁ?好みの子がいなかったとか?」



好みの子なんて、いるはずがない。
悪魔の心にはたった1人しかいないんだから。

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