俺様御曹司に飼われました
「お前、辛くないの?」



家の前まで送ってくれた音哉が別れ際にそう口を開く。



「……え?」


「だって、あんなん見てよ……」



見上げれば、なぜか音哉がとても苦しそうな顔をしてた。



「……音哉?」



「俺なら……」


「え?」



あたしを見下ろす音哉の目があまりに真剣で、逸らせなくなる。



「絶対にもっと……「なにしてんの?」



足音と共に聞こえて来た声に音哉の言葉は止まる。



「早いですね……」



嫌味たらしくなってしまうこの口。
もっとかわいくなりたいのに。



「は?そんな早くかえってきたつもりはないけど?」



たしかに今はそれなりに遅い時間だ。
でも、さっきあの女の子と一緒に帰ったのだからもっと帰りは遅いと思ってた。



「送り狼にはならないでね?俺のだから」



音哉とあたしの間に入ってにっこりと笑う。



「……なら、もう少し大事にしてやってくださいよ」


「別に俺らがどんな風に付き合おうが君には関係ないよ。ほら、行くよ」



あたしの腕を引っ張って歩き出す。

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