俺様御曹司に飼われました
「もういいっ」


「心海?」


「そんなにあたしのことバカににしたいなら、すればいいでしょ!もう知らない!」


「何を怒ってるんだよ?」



あたしの腕を掴んで、悪魔のほうを向かせる。



「……っ」



目の前にある悪魔の顔はどうしたってかっこよくて。
どんなふうに見たらいいかわかんない。



「なぁ、心海」


「……え?」



あたしの腕を掴んだまま、上からあたしを見下ろす姿。
その目から逸らすことができない。

とくんとくんと、うるさいほどに鳴り響く心臓。



「あの女の名前なんてわかんない」


「……へ?」



突然何を言い出すのかわからなくて、首を傾げる。



「お前が見てるから……焦る姿がなんか面白くて手を繋いだ。タクシーに乗せた。でも、二人きりになるつもりなんて一切なかった」



静かに、そう話す姿に目が釘付けになる。
この人は何をしててもやっぱり様になるんだ。



「でも、優しかった」


「え?」


「あたしに対する時なんかとは全然違って……あの人には優しかった」

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