俺様御曹司に飼われました
「泰治と楽しそうに話しやがって」



ビルのエレベーターの中、ぼそっとそう呟かれる。



「誰と何を話そうとあたしの勝手じゃない」


「勝手じゃねーよ。お前は俺のだ」


「……自分は元カノが好きなくせに」



あたしの言葉に悪魔の目が見開く。

はじめてだった。
あたしがこうして元カノの存在をきちんと口にするのは。



「元カノとかどーでもいいだろ……」



口では〝どーでもいい〟なんて言いながら、顔はそんな顔してない。
元カノのことを思い出してか、苦しそうな顔になってる。



「ねぇ、教えてよ。元カノのこと」


「……なんでだよ」


「知りたいから」



本当は知りたいなんて思ってない。
〝代わりにしてる〟なんて言われそうで怖い。
でも、あたしはどうしてもそっちを選んでしまう。



「今はまだ話せない」


「……今は?」



じゃあ、いつになれば話せるというのだろうか。

< 98 / 234 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop