あなたの溺愛から逃れたい
「全く。子供みたい、あの子」

女将は溜め息を吐いて、浴場の外を見つめる。


ーー創太が、お見合い。

何を戸惑ってるの、私。創太には私以外の女性と結婚して欲しいって思ってたじゃない。しかもその相手は、旦那様と女将が選んだ女性。誰よりも創太に相応しい女性に違いないはずだ。


だから、落ち着け私の心臓。


ドクンドクンといつもより大きな音を立てる左胸の前でそっと両手を組み、気持ちを落ち着かせようとする。



「じゃあ逢子ちゃん、私は先に行くわね」

女将にそう言われ、私は「はい」と答えた。


しかし女将は、浴場を出ていく前に身体ごと私に振り向き。



「創太のこと……ごめんなさいね」



そう言って、女将は今度こそ浴場を出て行った。




……嘘。


私と創太の関係……知られてた?


いつからだろう。



どうしよう。
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