あなたの溺愛から逃れたい
翌朝。

五時半に起床し、六時半から朝の業務といういつものスケジュール通りの仕事をこなしていた。


朝やることは、基本的にお客様の朝食準備、朝食出し、片付け、洗い物等々。今日も例外なくそれらを行う。



昨日は、あれきり創太とは何も話せなかった。
たまに、部屋に戻った後でこっそり電話やLINEのやり取りをすることもあるけれど、昨日はそれもなかった。
創太、怒ってたしな。私のこと嫌いになってくれたかな。
…….変なの。嫌ってほしかったはずなのに、胸が凄く痛む。



「おはよう、逢子ちゃん」

食堂で食器の用意をしていると、後ろから女将に声を掛けられる。

今日は濃紺の着物に身を包み、いつものように綺麗に髪を纏めた女将が、創太によく似た笑顔を浮かべている。


おはようございます、と私が挨拶を返すと「ちょっといいかしら?」と廊下のひと気のない物陰へ連れ出される。


「どうかしましたか?」

なんて質問しながらも、女将が何を話したいかは分かっていた。
創太と私のことだろう。


私の予想は恐らく当たっていて、

「今朝創太にね、『お見合いの日はいつにする?』って聞いてみたの」

と話し出される。
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