あなたの溺愛から逃れたい
創作意欲？


「画家さんとか……写真家さんとかなんですか？」

「いや、小説家」

「小説家！」

その言葉に、私はつい身を乗り出してしまった。


「何？ 仲居さん、本とか好きなの？」

「は、はい！ 寧ろ、読書だけが趣味といいますか！」

昔からたくさんの本を読んできた。
子供の頃はお小遣いが少なかったから、学校の図書館で借りた本を読むことが多かったけれど。
創太の部屋にある本も、片っ端から借りたっけ。


「そうなんだ。それは嬉しいよ」

「崎本様の書かれた小説も、もしかしたら読んだことがあるかもしれません」

「そうだったら嬉しいけど。ちなみに、岡崎 周（おかざき しゅう）って名前、知ってる？ それが俺のペンネームなんだけど」

「岡崎……周⁉︎」

驚いて、思わず大きな声を出してしまった。


「うん。知らない？」

「し、知ってます知ってます‼︎ というか、大ファンです‼︎」


岡崎 周と言ったら、弱冠十四歳にして小説界における有名な賞を多数受賞した、天才作家だ。
ミステリーからホームコメディなど幅広いジャンルで執筆出来るのもまた彼の魅力と言われている。


「わ、私、先生の作品全て読破しています！ 部屋にも全て揃っていて！ 次の新作はいつ出るのかって心待ちにもしていて、それから……はっ！」

興奮して、更に前のめりになって声も荒げてしまった。はしたなかった。
私は急いで姿勢を戻し、誤魔化すように咳払いをした。

すると。


「はははっ。仲居さん、あんた面白い人だな」

さっきまでずっと無表情だった彼が、盛大に吹き出した。


こんな風に笑うんだ。
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