あなたの溺愛から逃れたい
「こちら、お勧めの観光名所のマップになります」

その後、私は約束していたマップ等を持って、再度崎本様のお部屋を訪ねていた。


崎本様はマップとパンフレットを交互に見ながら「ありがとう」と答える。


どこか気になる場所はありますか? と私が聞くと。


「とりあえず、ここかな。近そうだし」


彼がマップの上で指差した先は、先程私がお勧めした神社だ。この季節なら、紅葉も満開で、より観光を楽しめるだろう。
「気を付けて行ってきてくださいませ」と私が伝えると。


「仲居さんって、名前何て言うの?」

と、突然聞かれる。


「え? ええと、惣田と申します」

「下の名前」

「お、逢子です」

急にどうしたんだろう、と小首を傾げて崎本様を見つめると、


「逢子も一緒に行こうよ。デートしよう」

と言ってきて……!


「なっ、ななっ⁉︎」

突然のことに、またしても動揺してしまう。

だ、だって、デートって⁉︎ さっき知り合ったばかりなのに、どういうこと⁉︎


……と思っていると、


「今構想中の次回作、恋愛小説にしようとしてるんだよね。だから、隣に女の子がいてくれた方がそういうイメージが思い浮かびやすいかなと思うんだけど」

と言われた。


なるほど、そういうことか……。
って、そりゃあそうだよね。さっき出会ったばかりの私なんかを、本気でデートに誘う訳ないじゃん。しかも、あの岡崎先生が……。自惚れ過ぎたな。そう感じて、心底恥ずかしくなる。
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