あなたの溺愛から逃れたい
段々と遠ざかる足音が聞こえる。やがてそれは聞こえなくなり、私だけがこの場に立ち止まっていることを理解する。


頭の中も、胸の奥も、全てがごちゃごちゃしている感覚だ。


私に好きな人が出来たら絶対に嫌だという彼の返答にどこか嬉しく思ってしまっている感情と、他に好きな男が出来たなら頑張れという言葉に傷付いてしまっている感情が混ざり合っている。


私に傷付く資格なんてない。私は創太のことを、きっともっと傷付けた。彼にお見合いを勧めたあの時も、そして、そうでありながら彼の気持ちを試すようなことを言ってしまった今も。


だから、傷付いてはいけないし、ましてや喜ぶなんてもってのほかだ。



……今の会話は、なかったことにするのが良いのかもしれない。


そう思いながらも、私はまだしばらく、その場から動けずにいた。
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