あなたの溺愛から逃れたい
最後、という言葉に、胸の奥がズキンと痛んだ。

そんな私の様子に気付いてか、創太は「いや、そんな顔させたい訳じゃなくて」と、いつもみたいに明るく笑いながら言ってくれる。


「別れはしっかり受け止めてるよ。でも、あまりに突然だったのは事実だろ。逢子から別れを切り出されるなんて予想もしてなかったし」

「う、うん……」

「だから、思い出が欲しい。思い出というか、心の準備かな。ああ、逢子に触れられるのもこれで最後なんだっていう心の準備と覚悟」

触れるって……お風呂で何する気? とも思ったけど、


「うん。私も……」


自然とその言葉が口から出た。


別れを切り出したのは私からだったけど、私も心の整理なんて全然出来ていなかった訳で。


最後という言葉は悲しいけど、最後という猶予を得られたことは嬉しい。



「逢子」

「創……ん」

私が彼の名前を呼ぶ声は、彼の唇によって封じられた。
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