あなたの溺愛から逃れたい
「はぁ〜。俺が言うのもなんだけど、うちの温泉はほんといつ入っても最高だね」
湯船にどっぷりと浸かりながら、創太が満足気にそう言う。
私も湯船の中で「そうだね」と返すけど。
「逢子、何か距離遠い」
「そ、そんなことっ」
そんなこと、ある。
だって恥ずかしいじゃない、一緒にお風呂なんて。当然だけどお互い裸だし……。
そりゃあ、今まで何回も裸を見せ合ってはきた。
でも、久しぶりだし。そもそも、裸なんて何度見せ合っても恥ずかしいし!
一緒にお風呂に入るっていうのも初めてという訳ではないけれど、長年付き合ってきた中でほんの数回とかだし。
でも。
これがお互いにとって〝最後の思い出〟ならーー。
パシャ、と音を立てて、私は彼の隣に移動した。
「ようこそおいでくださいました」
お客様への挨拶みたいなことを言って、創太は私のことを正面からぎゅっと抱き締めた。
暖かい。お湯の中だから余計に身体が火照りそうだ。
「逢子……」
創太が、私の名前を優しく呼びながら、私に口付ける。
さっきのキスとは違う。優しくて、そっと触れる、いつもの創太らしいキス。
私もそれに応えるように、彼のたくましい背中に両手を回す。
すると更にぎゅっと抱き締められ、キスも段々と深くなる。
彼からの熱が、気持ちが、全てが伝わってくるようで、お湯の中なのも相まってのぼせそうになる。