あなたの溺愛から逃れたい
「創太……」

これは〝最後の思い出〟。この温泉から出たら、創太とは……もう二度とキス出来ない。

そう思ったら無意識に、私も彼の名前を呼んで、私からも彼の唇を求めていた。


何度も何度もキスして、息苦しくなった頃、私の後頭部に添えられていた創太の右手が、私の胸にするりと移動してきた。


「ちょ、駄目……」

「駄目? キスだけ?」

「うん……」

「逢子はそれでいいの?」


そ、そんな聞き方、ずるい。

本当は、良くない。これが最後になるなら、創太からの全てを身体に覚えさせたい。覚えさせて忘れたくない。

だけど、そんなことは言えず、口ごもっていると。


「そうだよね」

私が何も言わないのをOKの意味だと思ったらしい創太は、私の胸をやんわりと揉んでくる。


「あ……」


久し振りに与えられるその感覚に、自然と口から声がもれる。


それに気を良くしたのか、創太は胸を触り続け、やがてその手は胸だけでなく、お腹、足、お尻等、色んな場所を触り始める。そしてーー


「あぁっ……」


与えられる快感が強すぎて、焦点が合わない。

余裕なんてすぐになくなって、呼吸が苦しくなる。


私ばっかりこんなーーと思ったけれど、ぼやける視界で創太を見ると、彼もまた、余裕のない表情をしていた。

創太のここまでの顔、珍しい。

創太も、私のことを必死で求めてくれているのかな。


そう思ったら、愛しさが溢れてきて。

もっと、求めてほしくて……。

私も……


私も彼が欲しくて……。




「逢子……っ」

「創、はぁ……っ」

私たちは、繋がり合った。強く、熱く。
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