あなたの溺愛から逃れたい
あなたと今まで楽しかった

「はあ……」

結局すぐにのぼせてしまい、その後すぐに創太の部屋にお邪魔した。

両思いになってからは何度も入ったことのある、彼の部屋。
私の部屋よりは広いけど、造りは基本的に一緒。
友だちとかには、旅館の客間みたいに完全に和室だと思われることが多いけど、神山家自体はそこまで和テイストでもない。
各部屋の寝床はベッドだし、畳じゃなくてカーペットだし、キッチンもやたらハイテクだし。


そんな彼の部屋のベッドの上に仰向けになりながら、同じくらいベッドの上に腰掛けた創太が、パタパタとうちわを扇いでくれる。

「大丈夫? クーラーよりはこっちの方がいいよな?」

創太が手動で送ってくれる風が、火照った顔と身体を少しずつ冷ましてくれて気持ち良い。

「うん、ありがとう」

そう答えれば、創太は「興奮して、やりすぎちゃったなー」なんて言いながらヘラヘラ笑う。全くもう!


……だけど、その後に続く彼の声は、打って変わって真剣なもので。

「……なあ、逢子。俺、今から凄い嫌なこと言っていい?」

いつもより僅かに低い声で、そう尋ねてくる。


嫌なこと……何だろう。
〝最後の思い出〟が終わったから、今後は必要最低限しか会話したくないとか?
……有り得るかもしれない。私だって、こんな風に激しく愛してもらっておいて、明日からは指一本触れてはいけないなんて、辛過ぎるもの。
お互いの気持ちを整理するためにも距離が必要ならば……彼の〝嫌な言葉〟も受け止めなければならないと思う。


でも、続く彼の言葉は、私の予想とは全く違うもので。

「逢子。俺……



やっぱり逢子が好きだ。別れるなんて無理だ。やり直してほしい」


……え?

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