あなたの溺愛から逃れたい

人気のテーマパークだけど、平日の木曜日というのもあり混雑している印象はなかった。普段がどのくらい混んでいるのかいまいち分からないけれど。


「逢子! 絶叫系乗ろうぜ! 九十度に落ちていくやつ!」

このテーマパークの目玉とも言えるアトラクションを早速指差しながら、創太が楽しそうにそう言う。


「無っ、無理だよあんなの! 怖くて乗れない!」

「大丈夫大丈夫! ちょっとフワッとして少しヒューッて落ちるだけだから!」

「説明が感覚的過ぎて分からないよー!
私はここで待ってるから、創太一人で乗ってきて!」

だけど、私がそう言うと創太は「じゃあ、ゆったりと進んでいくコースターは?」と、私の提案は無視してそう尋ねてくる。

私のことを置いてけぼりには絶対にしない。そう言われているようだったし、私のことを楽しませようとしてくれてるのかなって伝わってきて、凄く嬉しかった。

創太が好きな絶叫系に乗せてあげられなかったのは申し訳なかったけど、ゆったりとしたコースターに乗ったり、展示物を見ながら歩き回っていくイベントに参加したりと、とても楽しく過ごした。



楽しい時間が過ぎるのはあっという間で、腕時計を見るとそろそろ十七時だ。
まだ早い気もするけれど、あまり遅い時間に帰ると、若旦那である創太がいない間に留守を任されている従業員の人たちに申し訳ない。


だけど。


「創太。最後にあれ、乗りたい」

そう言って私が指差したのは、ゆったりと回る、大きな観覧車。
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