あなたの溺愛から逃れたい
あともう少しで頂上に着く。


「……俺は、これで最後にはしたくない」

真剣味を帯びた創太の声が聞こえて、私は視線を窓の外から彼に戻した。

創太の表情は、やっぱり真剣で。
真っ直ぐに私を見つめるその眼差しに、胸がドキンと高鳴る。


目が逸らせない。


静かな観覧車の中で、創太がゆっくりと、形の良いその唇を動かす。

「この先、俺はこうやって、逢子と何度もデートしたいって思う。
時には喧嘩して、だけど仲直りして、もっと仲良くなって……。
そうやって愛を深めながら、一生一緒にいたい。
子供もたくさん欲しい。誰にも負けないくらいの愛情を込めて二人で育てていこう」

彼の視線も、言葉も、何もかもが真剣で、胸を高鳴らせずにはいられない。

嬉しいよ。だって、私も創太と同じ気持ちだから。

創太と手を繋いでたくさんデートしたい。甘いもの食べ歩きしたい。お揃いのもの、たくさん買いに行きたい。


目を瞑ると、創太と過ごす幸せな日常が、不思議と簡単に想像出来た。きっと、それだけ創太の気持ちが真っ直ぐに私に届いているから。


私は幸せ者だなぁ。世界一大好きな人に、こんなにも愛されている。



そうして話していると、ゴンドラがどんどん頂上に近付いていく。


そして頂上に到着した時、創太が改めて口を開く。



「逢子。俺と結婚しーー」


私は彼の言葉を遮って。


「今までありがとう」


そう、伝えた。
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