あなたの溺愛から逃れたい
「は……? 北、海道?」

「少し前に、逢子ちゃんの大好きな小説家の先生が旅館に泊まりに来たのは知ってる?
その時にね、その先生が逢子ちゃんのことを凄く気に入ったみたいで、連絡先を伝えてあったの。
逢子ちゃんは先生からの告白を一度断ったけど、あなたのことを忘れる為に、自分から連絡を取ったの」

「それで北海道にある先生の家に転がり込むってこと? 逢子がそんな風に、他人の気持ちを利用してつけいるようなことする訳ないだろ」

「逢子ちゃんじゃなくて、先生がそれを望んだのよ」


ドクンと、心臓の音が、震えるように激しく動いた。


「逢子ちゃんも最初は勿論断ったみたいだけど、先生がどうしてもって。
私も後押ししたわ。きっと、それが逢子ちゃんにとって幸せの道へとなるから」


……母さんの言葉の最後の方は、俺の耳には殆ど届いていなかった。


想いが届かなくてもいい。逢子が他の男と幸せになってもいい。


確かにそう思っていたけれど、



こんなに急に、もう会えないっていうのか?
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