あなたの溺愛から逃れたい
あなたとずっと一緒にいたい
驚いた顔で私のことを見つめる創太に、何も返すことが出来ない。
気まずくて、だけど彼の真っ直ぐな気持ちが知れて幸せな気持ちもあって……。
着ていた薄い水色の膝丈ワンピースの裾を、ぎゅっと握り締めた。
そんな私に代わってか、女将が口を開く。
「北海道は嘘よ。逢子ちゃんにはこの数日、斎桜館のホテル館の方に宿泊してもらっていただけ」
創太が「はっ⁉︎」と驚きの声を上げる。
「逢子ちゃん、ここのところ働き詰めだったし、リフレッシュ休暇してもらおうかと思って」
「いや、だったら俺に言えよ!」
創太がどんどんイライラしてきているのが分かる。
焦った私は、「違うの」と、ようやく自分で口を開くことが出来た。
「逢子?」
「リフレッシュ休暇は建前。
私……木曜日に創太と別れてから、本当に辛くて。
私が別れを切り出したのに悲しんじゃいけないって何度も思ったけど、創太の顔を見るだけで胸が締め付けられて、苦しくて……。
何だか仕事にも支障が出そうで、だから創太が早朝から留守にしていたあの日、女将に相談したら、休暇をくれることになったの」
私がそう言うと、さっきまで声を荒げていた創太は「そう、なんだ?」と少し落ち着きを取り戻してくれた。
でも。
「だからって何で、もう戻ってこないとか、北海道に行ったなんて嘘を……」
彼のその質問には、再び女将が答える。
「あなたたちを試したかったのよ」
試す? と創太が聞き返す。