その男、極上につき、厳重警戒せよ
「からかってないよ。状況が変わった。……最初は、甘ったれた女だなと思っていたんだ。あんな目に見えるような形で反抗するなら、ちゃんと口でいえばいいのにって。……なのに思い立ったら遠田社長に退職宣言だもんな。正直ビビったよ。目が離したくないと思うと同時に、今、手を離したら、もう捕まえられないような気がしている。それはつまり、捕まえたいってことだろ? 多分俺は、君が好きなんだよ」
いきなりの告白めいた発言に驚いてしまう。
しかも、多分、と言いつつさらりと言えちゃうところはすごいなぁ。
私みたいに、ぐずぐず迷ったり、回りくどい言い方しないんだもの。
「私は……よくわからないです。深山さん、格好いいし、好きになって当たり前すぎるから」
「なんだよ、それ」
「あなたといれば楽に決まってる。迷わず先を決めて歩いて行ける人だもの。ついていくだけでいいんだわ。……でも私、そういうものから卒業するって決めたばかりなの。自分の足で立ちたいって、ようやく思えたんだもの」
深山さんが、傷ついたような顔をした。
自信満面じゃないその様子は、迷子になった子供のようで、意外に感じてしまった。
「止めても無駄ってこと?」
「そうですね。どちらかと言えば応援してほしいです」
「……分かった」
彼の口もとが緩く弧を描く。
そして視線が絡む。まっすぐで意味ありげな瞳には見つめられるだけでこんなにドキドキするんだ。