その男、極上につき、厳重警戒せよ


仕事が終わり、私は女将に追い立てられるように店を出る。
そういえばどうやって深山さんと連絡取ろう、と今更思っていたら、裏口の従業員入り口から出たとたんに、薔薇の花束を差し出される。


「やっと出てきたな」


あの日、私を連れ出した時と同じセリフで、彼が笑う。


「お花……私に?」

「口説くっていっただろ?」


恥ずかしげもなくこういう行動ができるのは外国育ちだからかしら。


「グイグイ来ますね」

「少しは効いてる?」

「さあどうでしょう」

「つれないな。まあいい。落とし甲斐があるってもんだ」


もうとっくに、私の気持ちはあなたのものだけど、それを伝えるのはもう少しだけ後にしよう。

だって、久しぶりの再会だもの。
恋がヒートアップする前に、したい話がたくさんあるから。




【Fin.】



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