好きやねん(押さえられへん思い)


あいつの寂しそうな表情を浮かべて俺が歩こうとしとったらあいつ。


ぱっと、俺の右腕を掴んで小声で

「逃げる気」


あいつは、1言、言って俺の腕を離してん。

「今は言えねぇが落ち着いたら言うから
すまん」

俺は、あいつに心配かけたくねぇし、言って欲しかったかも知んねぇ。


俺は、おかんの後ろについて歩きながら立ちすぐんどるあいつに気を止めてん。

心の中で『有難うなぁ、すまんなぁ』っと呟いてん。

あいつに逃げる気って言われたんは、確かにそうかも知んねぇ。


だが、俺が今、言えねぇ状況だから、逃げてるんやからなぁ。

ざわざわっと草花が揺れとるし俺の頬にひんやりした風が吹いとる。

俺とおかんの間に多少の沈黙が流れておかんの口が開いてん。
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