きっと好きだとわかる。
新しい街で。新しい私で。

浮いた転入生

2か月前、学年が上がる直前の2月に転入してきた一ノ瀬雪乃(いちのせ ゆきの)は、転入早々たいそう目立っていた。

それもそのはず。

瞳の大きい整った顔立ちは誰もが認める『美少女』で、
地毛なのかふんわりと毛先がカールしている黒髪に、真っ白な透ける肌はまるで童話の中のお姫様のようだった。

「新しい転入生見た?すっごく奇麗な子。」

「あれ、絶対お嬢様だよ。俺たちなんかとは別世界のお上品な感じじゃん。」

7クラスある学年を超え、他学年の生徒にまで噂は届いていた。しかし、注目の的の雪乃は全く新しい高校に馴染むことができず、2か月間の高校1年生を終えた。

悪いのは自分だ、と雪乃は思う。

話しかけられても、『ある理由』から積極的にクラスメイトと会話を続けられなかったからだ。

仲良くしたい気持ちはあるのに・・・。

最初に話しかけてくれたクラスメイトの女の子は、雪乃の転校理由や以前の生活、趣味などを聞いてくれた。

けれど答えようがなくて、曖昧に誤魔化し、笑っていたら離れていってしまった。

次に話しかけてくれた子は、遊びに誘ってくれたが、今まで「女の子同士」の遊びをして来なかった雪乃は不安が大きく、それとなく断ってしまった。

次に話しかけてきた子とは・・・最初は上手くコミュニケーションをとり、お昼のお弁当を食べていたはずだった。

けれどある日から雪乃を無視するようになり、次第に他の女の子も話しかけてくれなくなってしまった。

その理由は雪乃にも、よくわからない。

きっと何か、変な自分が失礼なことをしてしまったんだ。

やっぱり、自分なんか・・・・。

自信をなくし、一人で過ごすことが多くなった雪乃に話しかけてくる男の子はいなかった。

なぜかわからないけれど、教室の隅に集まり、雪乃を見てにやにやしているだけだった。

それが雪乃には寂しく、そしてなんだか怖かった。

そんなこんなで雪乃には自身の知らないところで、『深窓のご令嬢様』という不本意なあだ名がついてしまっていた。



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