【短編】不機嫌な最下くん
「最下くんすごいね!私も見たよ!可愛かった!」
女子の輪から抜けて、自分の席にカバンを置いた最下くんにそう声をかける。
最下くんは私の隣の席。
授業中、横目で彼の萌え袖姿が見られるこの席は本当に特等席だと思う。
「……はぁ」
え?
今、ため息ついた?
さっきまで、女の子たちとニコニコしゃべっていたのに…。
「バカにしてんだろ」
へ?
私にしか聞こえていない声。
最下くんは、カバンの中の教科書を片付けると、席を立ってすぐに教室から出て行った。
周りのクラスメイトはみんなそれぞれ会話をしていて、最下くんの低い声には気づかなかった見たい。
空耳なんかじゃない。
やっぱり…最近おかしい。
少し前までは、普通にしゃべってくれていたのに、最近の最下くんは、なんだか不機嫌だ。
私だけに。
私、何かしたのかな?