【短編】不機嫌な最下くん
*
あれ…。
化学の授業がおわり、ぞろぞろとみんなが実験教室から出ていくなか、ただ1人だけがまだ机の上に突っ伏していた。
「最下くん、授業終わったよ」
「……」
「最下くん」
私は、ビクともしない彼に歩み寄って、もう一度彼の名前を呼ぶ。
フワッと柔軟剤のいい匂いがして、
あ、最下くんの匂いだ
なんて心の中でつぶやく。
どうして、前みたいに話してくれなくなっちゃったんだろう。
思い当たることと言えば、一応男の子である彼に「可愛い」と連呼したこと。
だけど、それはクラスの女子全員が言ってることで、最下くんだってそう言われて嫌そうではない。
ほかに、何かあったかな…。
丸くなった彼の背中を見つめながらジッと考える。