【短編】不機嫌な最下くん
私を見るとムッとしたり、目が合うとあからさまに晒したり。
前みたいに話したいのに。
「最下くん…」
誰もいなくなった化学室。
1つ空いた窓から風が吹いて、厚手のカーテンが少しなびいた。
誰もいない。
私と最下くん2人きり。
思わず伸びてしまった手は、栗色をしたそれを優しく撫でた。
目で見えてるよりずっと、ふわふわしていて。サラサラで。
本当に何もしてないの?
なんてちょっと羨ましくなった。
「…舐めてるでしょ」
っ?!
少しも動かない体から、低くて冷たい声がしたので、伸びていた手を引っ込める。
やばいっ。
起きてた?!
ただでさえ嫌われているかもしれないのに、完全に終わったじゃん。
「ご、ごめん!最下くん、声かけたけど起きなかったからっ」
そう謝っても、まだ突っ伏したままの彼。
あぁ、怒ってるよ。
大変怒ってる。
それでもあんまり怯えていないのは、やっぱり彼が可愛いから。
それって、最下くんを舐めてるということなのだろうか。