その男
綺麗。
初めて男からそう言われた時、天にも昇る心地だった。
でも今はその言葉はただの単語でしかない。
「ここに来る女、みんなにそう言ってるんでしょ」
「そうだけど、陽子さんだけはお世辞じゃなくて本気」
自分より一回り以上年下の賢一の顔を見るために週に三回、このbarに通い始めてはや半年。
それまでBar通いなどしたことがなかった陽子だったがエステサロンの帰りにたまたまふらりと立ち寄った店がここだった。
最近の女子化する若い男たちと違い賢一は昭和の男たちが持つギラギラしたいやらしさを持っていた。