その男
腐女子芽以
芽以がそういう世界を知ったのは中学一年生の時だった。
友だちから借りたその漫画を始めは理解できなかった。
登場人物たちが薄いひょろひょろした男の子たちという点では今までの少女漫画と同じだったが、その男の子たちがいつも自分と重ねていた主人公の女の子に好きと言ったり抱きしめたりせず、別の男の子に好きと言ったり抱きしめたりするのだから。
「なんで男と男がキスしてるの!?」
キスシーンの先に至っては、数日間それが頭から離れないほど強烈で、知ってはいけない世界を覗いてしまったという罪悪感に悩まされた。
漫画を貸してくれた友だちにそのことを打ち明けると、彼女も同じだったという。
「でも今人気ある漫画はみんなホモ入ってるよ」
そう言う友だちが自分よりずっと大人に見えた。