その男
ミドリ
季節が変わり皆変わった。
営業パートナーだった篠崎さんは昇格し、ぼくは入社したばかりの女子社員と組まされることになった。
あれ依頼陽子さんはBarにぜんぜん来なくなり、最近はやたらカップルの客が多い。
まあ、放っておけば勝手にいちゃいちゃしてくれるから仕事は楽だけど。
代官山の本屋でいつもぼくをストーキングしていた女子高生も最近は全く見かけなくなった。
前よりも肩コリが軽くなったように感じるのは気のせいだろうか。
いろいろ変わったようだが、ぼくの周りが変わっただけでぼく自身は何も変わっていない。
ただ三人の女たちに告白もしてないのにフラれたような納得のいかないモヤモヤした気持ちだけがぼくの中に澱のように溜まっている。
「なんか女って勝手やな、ミド....」
ミドリ、そう呼ぼうとして止めた。