強引専務の身代わりフィアンセ
 シルバーよりゴールドを基調とした個性的なフォルムに、キャンディーを思わせるかのような色とりどりの輝きを放つ天然石との組み合わせに一目で虜になった。

 奇抜すぎず、シンプル過ぎない絶妙さは、ひとつ購入するとほかにも、と集めたくなる魅力を持ち合わせている。

 ティエルナのことを調べながら、私はそれ以上にIm.Merのことを知りたくなってしまった。親会社があの有名な「MILD」ということ、その専務である彼が立ち上げたことなどを知り、イベントではティエルナのエキストラでありながら、密かにIm.Merのブースも気になっていた。

 そして当日、私はティエルナのアクセサリーを身につけ、大ファンを装ってブースに顔を出していた。新作を見て、同じくエキストラで友人役の彼女とキャーキャーはしゃぐ。

 ブランドの良さをわざとらしく会話に織り交ぜて、アピールに務めていた。そしてふと、ショーケースを見つめる。

 もし、目の前に並んでいるのが、何度も見たIm.Merのアクセサリーだったら……。

 思わず見惚れるに違いない。ケースに並ぶ商品の数々をずっと見つめていたくなる。いいな、欲しいな。そんな想像をすると、私は自然と笑顔になって仕事をこなせた。

 結局、仕事で来てることもあり、そこまで離れてはいないが、MILDとIm.Merのブースに顔を出すことは叶わなかったけれど。

 残念に思いながらもモデルたちによる新作のショーが行われるので、参加していく。そして各社、ショーの前に新作の簡単な説明を行うのだが、そのとき彼を、高瀬専務を初めて生で見た。

 ホームページや専門誌のインタビュー記事で顔は知っていたけど、本物は実物以上だった。背も高く、整った顔立ちに、会場の視線が一気集まる。
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