強引専務の身代わりフィアンセ
あまり集中して聞いていなかった観客も静まり返り、彼の低くてよく通る声に耳を傾けた。下手なモデルを使うより彼を広告塔にした方がよっぽど売れると本気で思いながら、私もじっと彼に視線を送る。
私だけじゃない。それなのに、なぜかステージの上で話す彼と目が合ってしまったのだ。たった一瞬の出来事に、心臓も息も止まりそうになる。
自惚れで、自意識過剰なのもわかってる。目が合ったと感じたのだって、きっと私だけだ。その証拠に彼は何事もなく商品の説明を続けた。
気のせいなのに、自分をまっすぐに捉えたあの深い瞳の色が頭から離れない。それは仕事を滞りなく終えたあともだった。だからというわけではないけれど、私はMILDに契約社員として働くことを希望したのだ。
お風呂から上がり、髪を乾かす。本当はもっとタオルで水分をふき取ってからの方がいいんだろうけど、その手間を惜しんで私はドライヤーを強にして髪に当てた。
最近、買い換えたので、前のに比べると随分、静かだ。長さがある分、乾かすのに時間はどうしてもかかる。
本当は、歓迎会で専務に声をかけられたとき、Im.Merのファンだということを伝えたかった。あんな淡々とした言い方ではなく、魅力についてちゃんと話したかった。
専務と直接話すチャンスなんて千載一遇だ。けれど、初めて会ったときの自分の立場を思い出すと私はああいった無関心な態度しかとれなかったのだ。
ティエルナの大ファンとしてあそこにいた私を専務は覚えているわけない。それどころか存在を認識さえしていなかっただろう。
私だけじゃない。それなのに、なぜかステージの上で話す彼と目が合ってしまったのだ。たった一瞬の出来事に、心臓も息も止まりそうになる。
自惚れで、自意識過剰なのもわかってる。目が合ったと感じたのだって、きっと私だけだ。その証拠に彼は何事もなく商品の説明を続けた。
気のせいなのに、自分をまっすぐに捉えたあの深い瞳の色が頭から離れない。それは仕事を滞りなく終えたあともだった。だからというわけではないけれど、私はMILDに契約社員として働くことを希望したのだ。
お風呂から上がり、髪を乾かす。本当はもっとタオルで水分をふき取ってからの方がいいんだろうけど、その手間を惜しんで私はドライヤーを強にして髪に当てた。
最近、買い換えたので、前のに比べると随分、静かだ。長さがある分、乾かすのに時間はどうしてもかかる。
本当は、歓迎会で専務に声をかけられたとき、Im.Merのファンだということを伝えたかった。あんな淡々とした言い方ではなく、魅力についてちゃんと話したかった。
専務と直接話すチャンスなんて千載一遇だ。けれど、初めて会ったときの自分の立場を思い出すと私はああいった無関心な態度しかとれなかったのだ。
ティエルナの大ファンとしてあそこにいた私を専務は覚えているわけない。それどころか存在を認識さえしていなかっただろう。