強引専務の身代わりフィアンセ
「美和」
いつの間にか私の上になっていた彼が、艶っぽい声で名前を呼んだ。私はなにも言えず、ただ彼の顔をじっと見つめることしかできない。
そして彼の手がシャワーを浴びて、着たばかりのガウンの間に滑り込まされ、私の肌に触れた。
その直に伝わる手の熱さに驚いて、体を震わすと無意識に涙が目尻から零れ落ちる。それを見た彼は手を止め、大きな瞳をさらに見開いた。
なんとも言えない気まずい空気が流れて、おかげで私は彼に伝えそびれていたことを、ようやく口に出すことにしたのだ。
「ごめんなさい。私、その……実はこういうこと、初めてなんです」
観念して、よれよれの声で白状する。さっきは仕事だから、と告げた。それはまぎれもない理由で、けれど自分の経験のなさも引っかかる要因だった。
前に付き合っていた彼とは、仕事が忙しくて深い仲になる前に別れちゃったし。
そういうことを、どのタイミングで相手に伝えるべきなのか、伝えた方がいいのか、それさえもわからない。どうしよう。どう思われただろう。
あれこれ考えていると、彼が体を預けるようにして抱きしめてくれた。そして耳元で謝罪の言葉が漏らされる。
予想外の行動にぽかんとしていると、一樹さんは顔を上げて、私を至近距離で見下ろしながら、そっと頭に手を添えてくれた。
「怖がらせるつもりはなかったんだ。美和が欲しくて焦りすぎた」
申し訳なさそうに言われ、私はかすかに首を横に振る。
「謝らないでください。その私……こんなのですけど……」
おそるおそる答えると、一樹さんは困ったように笑う。
いつの間にか私の上になっていた彼が、艶っぽい声で名前を呼んだ。私はなにも言えず、ただ彼の顔をじっと見つめることしかできない。
そして彼の手がシャワーを浴びて、着たばかりのガウンの間に滑り込まされ、私の肌に触れた。
その直に伝わる手の熱さに驚いて、体を震わすと無意識に涙が目尻から零れ落ちる。それを見た彼は手を止め、大きな瞳をさらに見開いた。
なんとも言えない気まずい空気が流れて、おかげで私は彼に伝えそびれていたことを、ようやく口に出すことにしたのだ。
「ごめんなさい。私、その……実はこういうこと、初めてなんです」
観念して、よれよれの声で白状する。さっきは仕事だから、と告げた。それはまぎれもない理由で、けれど自分の経験のなさも引っかかる要因だった。
前に付き合っていた彼とは、仕事が忙しくて深い仲になる前に別れちゃったし。
そういうことを、どのタイミングで相手に伝えるべきなのか、伝えた方がいいのか、それさえもわからない。どうしよう。どう思われただろう。
あれこれ考えていると、彼が体を預けるようにして抱きしめてくれた。そして耳元で謝罪の言葉が漏らされる。
予想外の行動にぽかんとしていると、一樹さんは顔を上げて、私を至近距離で見下ろしながら、そっと頭に手を添えてくれた。
「怖がらせるつもりはなかったんだ。美和が欲しくて焦りすぎた」
申し訳なさそうに言われ、私はかすかに首を横に振る。
「謝らないでください。その私……こんなのですけど……」
おそるおそる答えると、一樹さんは困ったように笑う。