強引専務の身代わりフィアンセ
「わかりました。では、婚約者役としてどういった女性を希望されますか? 年齢や容姿などありましたら仰ってください。スケジュールなどを調整し、条件にあいそうなスタッフを何人かこちらでピックアップしますので……」
「その必要はない」
「え?」
いつもの調子で話を進めていこうとしたところで、リズムを崩される。ファイルから改めて専務に視線を移すと、整った顔を不快そうに歪ませていた。
その顔も迫力があって私は反射的に背筋を正す。専務とはいえ、会社でもこんなシチュエーションは、まずない。
「何度言わせるんだ。俺は君が欲しいんだ。他の人間はいらない」
専務の声に込められた感情を推し量ることなんてできない。でも言われた言葉をそのまま受け取ると、私の体温は勝手に上昇した。ついでに今までおとなしかった心臓が急に存在を主張しはじめる。
え、いや、ちょっと待って!
ショートしそうな頭を懸命に回して、落ち着きを取り戻そうと躍起になる。今の言葉を額面通りに受け取っては駄目だ。
上擦りそうな声の調子を、一度唾液を嚥下して整える。専務はエキストラとしての私の実力を買ってくれているだけだ。それはものすごく、皮肉なことではあるけれど。
「あの、ご心配なく。ちゃんと実力のある経験豊富な者を用意しますから。不安はあるかもしれませんが、実際に会って、納得いくまで話してから判断してもらっても構いませんし」
エキストラを依頼する、ということは一般的ではなく、堂々と人に言えることでもない。だからこそ、最初からこちらを信用してくれ、というのが無理な話だ。
神経質になる依頼者が多いのも私は知っていた。けれど専務はさらに眉を寄せて鋭い視線をこちらに送ってくる。
「その必要はない」
「え?」
いつもの調子で話を進めていこうとしたところで、リズムを崩される。ファイルから改めて専務に視線を移すと、整った顔を不快そうに歪ませていた。
その顔も迫力があって私は反射的に背筋を正す。専務とはいえ、会社でもこんなシチュエーションは、まずない。
「何度言わせるんだ。俺は君が欲しいんだ。他の人間はいらない」
専務の声に込められた感情を推し量ることなんてできない。でも言われた言葉をそのまま受け取ると、私の体温は勝手に上昇した。ついでに今までおとなしかった心臓が急に存在を主張しはじめる。
え、いや、ちょっと待って!
ショートしそうな頭を懸命に回して、落ち着きを取り戻そうと躍起になる。今の言葉を額面通りに受け取っては駄目だ。
上擦りそうな声の調子を、一度唾液を嚥下して整える。専務はエキストラとしての私の実力を買ってくれているだけだ。それはものすごく、皮肉なことではあるけれど。
「あの、ご心配なく。ちゃんと実力のある経験豊富な者を用意しますから。不安はあるかもしれませんが、実際に会って、納得いくまで話してから判断してもらっても構いませんし」
エキストラを依頼する、ということは一般的ではなく、堂々と人に言えることでもない。だからこそ、最初からこちらを信用してくれ、というのが無理な話だ。
神経質になる依頼者が多いのも私は知っていた。けれど専務はさらに眉を寄せて鋭い視線をこちらに送ってくる。