強引専務の身代わりフィアンセ
「このあとは、どうする? どこか行きたいところでもあるか?」
食事が済んでから、当たり前のように彼に尋ねられ、間抜けにも私はきょとんとした面持ちになる。買い物して、尋ねたいことを質問して。
これで今日の目的は果たせたように思う。だから、こちらとしては、もう大丈夫だと答えなくては。元々忙しい人なのに、気を遣わせてしまっているのかもしれない。
でも、そんなふうに聞いてくれるということは、貴重な休日の残り時間を、もう少し私と一緒に過ごしてもいいと思ってくれているんだろうか。もしそうなのだとしたら……。
「よかったら、一樹さんの好きなところに連れて行って欲しいです」
“婚約者として”笑顔で答えた。仕事だってちゃんとわかっている。でも、自然と溢れ出る気持ちを素直に口に出すことができた。
とは言ったものの、どこに連れて行かれるのか、内心は不安が広がる。再び専務の車に乗せてもらい、移動を始めたが、専務はこれといった行き先を告げなかった。
専務のことだから、美術館とか舞台鑑賞とかそういう系かな? それとも仕事関係のなにか? どっちにしろ、あまりついていけそうにないかも。
専務と私とでは格が違いすぎる、と肩を落とす。美弥さんだったら、そういった系も一緒に楽しめるんだろうけど。
無意識のうちに彼女と比べて、頭を振った。そしてフロントガラスから空を眺める。
七月の太陽はなかなか攻撃的で、破壊力がある。けれど、今日は雲一つない快晴だ。澄み切った青空に、わずかに心が落ち着く。
一方、車は意外にもひとけのない方に向かっていた。どちらかといえば、山道だ。道もきちんと舗装されておらず、緑が徐々に顔を覗かせる。どこを目指しているのか、ようやく尋ねようとしたところで、車は停まった。
食事が済んでから、当たり前のように彼に尋ねられ、間抜けにも私はきょとんとした面持ちになる。買い物して、尋ねたいことを質問して。
これで今日の目的は果たせたように思う。だから、こちらとしては、もう大丈夫だと答えなくては。元々忙しい人なのに、気を遣わせてしまっているのかもしれない。
でも、そんなふうに聞いてくれるということは、貴重な休日の残り時間を、もう少し私と一緒に過ごしてもいいと思ってくれているんだろうか。もしそうなのだとしたら……。
「よかったら、一樹さんの好きなところに連れて行って欲しいです」
“婚約者として”笑顔で答えた。仕事だってちゃんとわかっている。でも、自然と溢れ出る気持ちを素直に口に出すことができた。
とは言ったものの、どこに連れて行かれるのか、内心は不安が広がる。再び専務の車に乗せてもらい、移動を始めたが、専務はこれといった行き先を告げなかった。
専務のことだから、美術館とか舞台鑑賞とかそういう系かな? それとも仕事関係のなにか? どっちにしろ、あまりついていけそうにないかも。
専務と私とでは格が違いすぎる、と肩を落とす。美弥さんだったら、そういった系も一緒に楽しめるんだろうけど。
無意識のうちに彼女と比べて、頭を振った。そしてフロントガラスから空を眺める。
七月の太陽はなかなか攻撃的で、破壊力がある。けれど、今日は雲一つない快晴だ。澄み切った青空に、わずかに心が落ち着く。
一方、車は意外にもひとけのない方に向かっていた。どちらかといえば、山道だ。道もきちんと舗装されておらず、緑が徐々に顔を覗かせる。どこを目指しているのか、ようやく尋ねようとしたところで、車は停まった。