強引専務の身代わりフィアンセ
 私の知ってるホテルと違って、隣の部屋のドアとかなり距離があるのは気のせいではないと思う。専務がカードキーで部屋を開けてくれたので私もそれに続いた。そして部屋に入った瞬間、私は大きく目を見開く。

「すごい!」

 思わず声をあげてしまった。部屋というより、どこか外国の家みたいだった。

 玄関スペースみたいなものがちゃんとあり、進むとすぐにベッドが置かれているわけではなく、リビングのような部屋がまずは我々を出迎えてくれる。

 白を基調とし、金で装飾された鏡やアンティーク家具に、大きなシャンデリア。真ん中にはダイニングテーブルのようなものが置かれていて、パーティーでもできそうだ。

 ガラス張りかと思うほど窓も大きく、エキスポのアリーナとその周辺が一望できる。専務は届いている荷物をチェックしているので、断りを入れてからほかの部屋も見学することにした。

 バスルームはゆったりとしたスペースが取られ、その横にはドレッサールームもあった。クローゼットの中を確認すると、この前専務と買い物に行ったドレスたちが丁寧にかけられている。

 私が選んだのは美弥さんを意識したスパンコールが綺麗な深紅のベルベッド生地のドレスに、小花があしらわれたマキシ丈のブルーのドレス、あとはシフォン素材のリボンが目を引く紫色のドレスだ。

 ドレスを選ぶ際に、美弥さんが赤が好きなのは知っていたので、最初に赤のドレスをお願いした。そして、私の好きな青色のドレスも選んでもらい、紫色のドレスはお店の人の一押しだ。

 明日は、間違いなく深紅のドレスを着用することになるだろう。
< 72 / 175 >

この作品をシェア

pagetop