強引専務の身代わりフィアンセ
昔はそういうサクラ的なものが多かったが、最近では個人的な依頼が増加し、SNSが発達したことで、さらに需要は増した。
そんな理由で?と思うものから深刻なものまで、様々な事情を抱えた人々のために望む役になりきるのがこの仕事だ。
代行業というと仰々しいし、サクラと言うと、どこかマイナスなイメージも含んでいるので私たちは「エキストラ」と呼んでいる。元々はドラマや映画で、必要なワンシーンを作るために演じる群衆のことだけれど。
七時からの打ち合わせは、自宅に併設されている事務所で行われた。さっさと夕飯をすませて私は先に事務所に待機する。依頼者は来月結婚式を挙げる二十代女性だった。
高校時代にわけあって不登校になり、結婚式に呼べるような友人がほとんどいないが、そのことを相手の両親や親族には話せていないらしい。
ただ、夫となる彼は友人を多く招待していることもあり、バランスを考えても高校時代の友人を呼ばないのは不自然に思われるのでは、ということでうちを頼ってきたわけだ。
エキストラは、本番よりも事前準備がかなり大変だ。今回の場合、相手の高校のことを知ることから始まり、どういうきっかけで仲良くなったのか、高校時代の彼女はどんな学生だったのか、どんな思い出があるのかなどを緻密に設定し頭に入れておく必要がある。
正直、割に合わない、と思うことだって一度や二度ではない。失敗は絶対に許されないし、信頼と実力がものをいうので誰にでも頼める仕事でもないし。
おかげで人材不足なのも十分に承知している。実家でお世話になっている身としては、そんな状況で両親に頼まれたら、なかなか拒否することも難しい。
でも、私は自分の意思でこの仕事をしている。こうして精力的に手伝い始めたのはわりと新しい話だったりするのだけれど。
そんな理由で?と思うものから深刻なものまで、様々な事情を抱えた人々のために望む役になりきるのがこの仕事だ。
代行業というと仰々しいし、サクラと言うと、どこかマイナスなイメージも含んでいるので私たちは「エキストラ」と呼んでいる。元々はドラマや映画で、必要なワンシーンを作るために演じる群衆のことだけれど。
七時からの打ち合わせは、自宅に併設されている事務所で行われた。さっさと夕飯をすませて私は先に事務所に待機する。依頼者は来月結婚式を挙げる二十代女性だった。
高校時代にわけあって不登校になり、結婚式に呼べるような友人がほとんどいないが、そのことを相手の両親や親族には話せていないらしい。
ただ、夫となる彼は友人を多く招待していることもあり、バランスを考えても高校時代の友人を呼ばないのは不自然に思われるのでは、ということでうちを頼ってきたわけだ。
エキストラは、本番よりも事前準備がかなり大変だ。今回の場合、相手の高校のことを知ることから始まり、どういうきっかけで仲良くなったのか、高校時代の彼女はどんな学生だったのか、どんな思い出があるのかなどを緻密に設定し頭に入れておく必要がある。
正直、割に合わない、と思うことだって一度や二度ではない。失敗は絶対に許されないし、信頼と実力がものをいうので誰にでも頼める仕事でもないし。
おかげで人材不足なのも十分に承知している。実家でお世話になっている身としては、そんな状況で両親に頼まれたら、なかなか拒否することも難しい。
でも、私は自分の意思でこの仕事をしている。こうして精力的に手伝い始めたのはわりと新しい話だったりするのだけれど。