王太子様の策略に、まんまと嵌められまして~一夜の過ち、一生の縁~
私は素直にアマンダに手渡す。
アマンダは眉間に皺を寄せ、手紙をみつめながら考えあぐねているようだ。
私は前で手を組み、祈るようにアマンダを見つめる。
やがてなにかを思いついたように、目を見開いた。
「上手くいくかどうかは分かりませんが、ひとつだけ方法が」
「それはなに!?」
待ってました!と言わんばかりに、ずいっと身を乗り出す。
アマンダは驚いて、少し後ずさった。
「三日後、その日は着替えと化粧を私にお任せくださいませんか?ビアンカ様らしくない格好で気づかせない、という作戦です」
「私らしくない?」
「ええ。いつもはあまり派手な化粧もドレスもしませんでしょう?敢えて派手にするのです。素のビアンカ様が分からないくらいに、派手に、劇的に」
果たしてそれで上手くいくのだろうか。
少し不安な部分はある。
しかし、それ以上にいい案が思いつかない。
「この手紙の文言から、王太子様はどこの貴族に娘がどれだけいるのか、ハッキリと把握していないように思われます。ですから、上手くいけば気づかれずに済むかもしれません。まして事情を知らない女性たちは、王太子様に見初められるチャンスだと、この期に及んでより派手に着飾ってくるでしょう。それに上手く紛れ込むのです」
「紛れ込む……」
「ええ。そのときはビアンカ様もまったく別の令嬢として、振る舞わなければいけませんよ。いつものビアンカ様で行ってしまわれては、どんなに外見が変わっても気づいてしまいます。演じるのです、ビアンカ様とは逆の令嬢を」