王太子様の策略に、まんまと嵌められまして~一夜の過ち、一生の縁~
浮く身体。
あっという間に、横に抱えられる。
その行動に、静まり返っていた辺りがまたざわめき始めた。
しかし王太子様は気にせずに私を抱きかかえたまま、その場から去ろうと歩き出す。
周りにいる人たちは、まるで地が割れたように左右に寄って道を作り、そこを颯爽と王太子様が歩いていく。
青ざめた表情で見つめる女性。
いかにも悔しそうな表情で睨む女性。
周りの反応はさまざまだった。
しかし肝心の私はというと、そんな周りの光景を横目で見ながら、どうしたらいいか分からず、逃げようにも逃げられないこの状況に、ただ身を任せていくしかなかった。
どうしてバレてしまったの!?
自分でも見違えるくらい、違う姿になっていたはずなのに!
それになぜ王太子様は、私の名前を知っているのよ!
納得がいかないことがたくさん、頭の中をぐるぐると回る。
そんな私をよそに、王太子様はずんずんと城の中を進んでいく。
螺旋階段を上り、長い廊下を歩き、やがてある部屋の前に辿り着いた。