王太子様の策略に、まんまと嵌められまして~一夜の過ち、一生の縁~
「夜の魔術……。つまり私の思いは幻想だと言いたいのですか?」
「そ、そうです。でなければ、私を好きになるだなんてあり得ませんもの」
「ですか。分かりました」
そう言って王太子様は大きく息を吐いた。
……もしかして諦めてくれた?
王太子様の表情に恐ろしさは感じていたものの、その言葉に私は少しホッとした。
「そういうことですので、これ以上お話することもございません。では私はこれで失礼したいと思いますわ」
ベッドから立ち上がり、王太子様に深く礼をする。
王太子様はその間目を合わさず、俯いたままだった。
その姿に少し申し訳ない気持ちを抱くが、そのまま部屋の出口へと向かう。
変に優しい言葉を掛けてその気になられても困るし、本来の自分はこういった人間であると見せた方が、王太子様も"嫌な女だった"と諦めも早くなるだろう。
でも良かった。
どうやら納得してくれたようだし、これ以上の進展はなさそう。
そう思い安心しながら、扉に手を掛けたときだった。
「――どこに行かれるのです?」