王太子様の策略に、まんまと嵌められまして~一夜の過ち、一生の縁~
王太子様には敵わないと思いつつも、悔しくて、キッと睨む。
でもやっぱり王太子様はそんな私を、愛おしそうに微笑みながらしゃがんで見つめていた。
「笑い顔も素敵ですが、その怒った表情も愛らしく可愛い。コロコロと変わるあなたの色々な表情を、本来の姿でちゃんと見ていたい。いつもの姿に戻って頂けますか?ビアンカ」
王太子様の言葉に、咄嗟に思い出す。
「そうですわ!私と分からないように濃い化粧を施したというのに、どうしてあんな遠くからでも、すぐに分かったのですか!?」
バレないと思っていたのに。
なぜあんなにも簡単に、私があの夜の令嬢だったと気づいたのだろう?
私の問いに、王太子様は悩むような仕草も見せず、堂々と答えた。
「そんなもの簡単です。……思うからこそ、です。あなたがどんなに変装していようとも、人ごみの中で紛れ込んでいようとも、すぐに見分けられますよ。それだけ私はビアンカを愛しているのですから」