王太子様の策略に、まんまと嵌められまして~一夜の過ち、一生の縁~
「父と母は今、隣国へ外遊に行っていていないのです。戻り次第、顔合わせをしましょう。ビアンカのこと、必ず歓迎してくれますよ」
「え、いやあの、それはとても光栄なことなのですが、それよりも私、家になにも報告もせず帰らないというのは……」
「その点は問題ありません。使いを出し事情は説明してありますから、心配しなくても大丈夫ですよ」
「事情っ!?なんで勝手にそんなこと!」
「言ったでしょう?一生離さない、と。そうですね、戻れるとするなら、私を好きになったときでしょうか」
「好きになったときって……。そんないつになるか」
「きっとすぐ好きになりますよ」
そう言って、ファリス様は笑った。
なぜそこまで自信満々に言えるのかしら。
好きになれないかもしれないのに。
正直、これまで色んなことがありすぎて、自分の気持ちが分からない。
そりゃあほんの少し前まで、王族の人たちは世界が違いすぎて、関わるなんてことすら考えたこともなかったし、ましてやファリス様のことなんて、この国の次期国王様になるという認識だけで、興味すら持たなかった。
それが今では私の目の前にいて、さらには私に妻になって欲しいと求婚している。
この短期間で私のいた世界が、180度ガラリと変わってしまった。
気持ちがついていかないのも当たり前だろう。