王太子様の策略に、まんまと嵌められまして~一夜の過ち、一生の縁~
でもこうなってしまった以上、私がどうあがいても白紙はない。
ファリス様の気持ちが変わらない限り、私はファリス様の求婚を受け入れるしかなくなってしまった。
つまり、この話がなくなるためのひとつの方法としては、ファリス様が私に醒めることだけなのだろうけど……。
「ひとつ、聞いてもよろしいですか?」
「なんでしょう?」
「その、結婚するということなのですが、私がファリス様をどんなお方なのか知らないのと同じように、ファリス様も私をよく知らないと思います。もし私の裏の部分が見えて、思いが醒めてしまい結婚を解消するということは」
「ありませんね。どれだけ嫌な部分が見えたところで、抱く思いには勝てませんから。それも含めて受け止める覚悟がありますよ。だからあなたにプロポーズしたのです。それくらいでコロコロと気持ちが変わるほど、軽い人間ではありません」
私の話を最後まで言わせずに、ファリス様はスラスラと言い切った。
しかもその言葉は、思った以上に甘さを含んだものだから、思わず赤面してしまう。
どうしてここまで言えるの。
相手は私なのに。……なぜ?
そんな疑問を投げかけようと口を開きかけたが、ファリス様が先に話し始めてしまったため、聞けなくなってしまった。