王太子様の策略に、まんまと嵌められまして~一夜の過ち、一生の縁~
"次期王妃"という言葉が、重くのしかかった。
そうよね、そうなるのよね。
恐ろしくて敢えて深く考えずにいたけれど、ファリス様と結婚するってことは、つまりそういうことなのよね。
「アマンダがここにいるってことは、父と母ももう知っているってことなのよね?」
「ええ。城の使いの方が数人いらっしゃいまして。旦那様はお話を聞いて卒倒されておりました。奥様は……、その、異様なテンションで歓喜されておりましたが」
「想像が容易いわ……」
ため息が漏れる。
母は楽天家な人間だからいいとして、父はこの話を聞いてどう思ったのだろう。
要らぬ心労を与えてしまったと、とても申し訳ない気持ちになる。
よもや男爵家の娘が次期国王に見初められたなんて、普通じゃありえないもの。
きっと釣り合いを持たせるために、父はもう少し上の爵位を与えられるのかもしれないけれど、それ以上に父への負担も大きくなるわけで。
考えるほどに胸が痛い。
「結局、私はもう逃げられないのよね」
「そうですね。王太子様のお気持ちが変わらない限り」
「変わることはあると思う?」
「ないと思います」