王太子様の策略に、まんまと嵌められまして~一夜の過ち、一生の縁~
それから間もなく、部屋の扉が叩かれた。
そこに立っていたのは、使いの者ではなくファリス様本人。
ファリス様もまた着替えをしていて、ラフな白いシャツとトラウザーズといった出で立ちだった。
とはいえ、どの服を着ていようが見惚れるほどに美しい。
ドキリと胸がときめいてしまったが、気づかれないよう冷静を装う。
「ファリス様自ら、お迎えにいらっしゃったのですね。ここは使いの者が呼びに来るのだと思っていましたわ」
「少しでもビアンカと一緒にいたいと思いまして。……ダメですか?」
「い、いえ……。別にダメなわけでは……」
ああもう、調子が狂う。
どうしてそんなにスラスラと、胸がときめくような言葉を言えてしまうの。
ファリス様は微笑みながら私を見つめている。
恥ずかしくなって、咳ばらいをしながら目を逸らした。
「は、早く行きましょう!私お腹が空いてしまいました!」
「ハハッ、そうですね。では食堂までご案内します」
そう言ってファリス様は私の前に手を差し出した。
別に後ろをついて歩いていけばいいだけと思うが、手を差し出されてしまった以上断るわけにもいかず、その手の上に自身の手を重ねる。
そしてエスコートされる形で、食堂へと行くことになった。