王太子様の策略に、まんまと嵌められまして~一夜の過ち、一生の縁~
「どうしました?」
その声とともに、ぐっとファリス様の顔が近くなる。
目の前に、石膏のようなつるりとした綺麗な肌を持つ美しい顔があり、ドキリと胸が大きく跳ねた。
「顔が少し赤いようですが」
「そ、それはファリス様が唐突に私を覗き込むからですわ!」
慌てて身体を後ろに逸らし、そう弁明したのだけれど。
もちろん近くにファリス様の顔があったことも、顔を色づけさせる理由のひとつではあったのだけれど、それだけではない。
ファリス様がそのようなパーティーを開くということは、いよいよ話が現実味を増す。
私を伴侶にすることにそれだけ本気だということだ。
けれどこの短期間で、しかもたったあの一夜で、なぜそこまで私を伴侶にしようと決意するまでに至ったのだろう。
考えてもピンとこない。
私に一体、なんの魅力があるというの。
「……本当に、やるのですか?」
「ええ。なにか気になる点でも?」
「いえあの、私とでいいのかな?と」
その問いに、ファリス様は困ったような表情を浮かべながら笑う。
まるで『いまさらそんなことを聞くのか?』といったような少し困惑した表情だ。