王太子様の策略に、まんまと嵌められまして~一夜の過ち、一生の縁~
本来ならその言葉は、これから私に対してなにを仕出かすのだろう、という不安を覚えるものなのかもしれない。
しかし実際は、不思議とドキリと胸が高鳴って、そのままどくどく早鐘を打ち続けていた。
それは不安からのものではなく、なにかしら期待をしている、ときめきに近いものだった。
自分自身に困惑する。
なぜこんなに胸がドキドキして、治まらないのか。
ファリス様のことは嫌いじゃない。
けれど好きかと言われると、正直分からない。
だいたいにして、こんな短期間で人を好きになるなんて可能なのだろうか。
好きになるタイミングとは?
段階的に受け入れていくものではないの?
分からない。
自分の思考だけではなんとも理解できない。
……だからこそ、妙な期待をしてしまうのかもしれない。