王太子様の策略に、まんまと嵌められまして~一夜の過ち、一生の縁~


「仕方ないですね。まだ気づかないようなら、パーティーまでに嫌というほど気づかせてあげましょう。覚悟していてください、ビアンカ」

ファリス様は私の瞳をじっと見つめて、囁くように答えた。



本来ならその言葉は、これから私に対してなにを仕出かすのだろう、という不安を覚えるものなのかもしれない。


しかし実際は、不思議とドキリと胸が高鳴って、そのままどくどく早鐘を打ち続けていた。

それは不安からのものではなく、なにかしら期待をしている、ときめきに近いものだった。


自分自身に困惑する。
なぜこんなに胸がドキドキして、治まらないのか。


ファリス様のことは嫌いじゃない。

けれど好きかと言われると、正直分からない。


だいたいにして、こんな短期間で人を好きになるなんて可能なのだろうか。

好きになるタイミングとは?

段階的に受け入れていくものではないの?


分からない。

自分の思考だけではなんとも理解できない。


……だからこそ、妙な期待をしてしまうのかもしれない。

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