王太子様の策略に、まんまと嵌められまして~一夜の過ち、一生の縁~
それからパーティーが行われる日まで、とても慌ただしい毎日となった。
いかんせんマナーや振る舞いなど、身に着けていないわけではないが、それは貴族としての最低限のものだったため、王族の一員となるために再度勉強し直す必要があった。
城の教育係を請け負う者が毎日部屋にやってきては、頭の上から足のつま先まで細かく身振り手振りを指導する。
常に身体に力を入れている状態。ちょっとしたことで気を抜こうものなら、身体がビクつくような激が飛ぶ。
加えてダンスのレッスン、パーティーで着るドレスの打ち合わせ、その他確認など諸々……。
身体も心もゆっくりと休める時間がほとんどなく、お陰で夜ベッドに寝転がった瞬間に記憶を無くしてしまう毎日だった。
それに反して、ファリス様は生き生きとしながら、パーティーの準備を進めていく。
どこからそれだけのやる気がみなぎるのか、不思議なくらいだ。
私なんてこんなやつれた状態だというのに。
「大丈夫ですか?ビアンカ。どうやらお疲れのようですね」
「ええ。見ての通りです」
「はは、本気の余裕のなさだ」
からかっているのだろうか、私のちょっとした嫌味も余裕で返す。
まったく私がこんなになっているのも、誰のせいだと思っているの。
そもそも私はまだ、ファリス様の求婚を受け入れたわけではないのに。
イライラが募る。
どうしようもない苛立ちが、日に日に積み重なっていく。