王太子様の策略に、まんまと嵌められまして~一夜の過ち、一生の縁~
「あら、見慣れない顔の方ね。もしかして、あなたがファリスの……?」

くりっとした大きな目、ぷっくりとした桃色の唇、
気品を兼ね備えつつ、どこかしらお転婆な雰囲気を持つ女性。

この女性は紛れもなく……。

「ふぃ、フィオナ王妃様っ!!これはとんでもない失礼を……!!大変申し訳ございません!」


私は慌てて腰を深く落とし、一礼をした。

外遊先から帰ってくることは知っていたが、もう城へ戻っていたとは。


「いいのよ、顔を上げて。それよりも怪我はなかった?」

「私はまったく……!むしろ王妃様のほうに……」

「ちょっと当たっただけだからなんともないわ、気にしないで。そんなことより、あなたがファリスの選んだお相手の方ね?初めまして」

「び、ビアンカ・ウィスト・キャロラインと申します。お初にお目にかかります……!まさかこのような場所で王妃様と会えるとは思いませんでした。外遊先から既にお帰りになられていたのですね」

「ほんの少し前に着いたのよ。いつも出迎えは気を遣うから遠慮してもらっているの。こっそりと帰ってくるのが定番なのよ。……あら?」

王妃様は私の頬が濡れていたのに気づき、白く細い指先をその頬にあて拭う。

「どうしたの?ファリスと喧嘩でもした?」

「あ、あの……」

「私と一緒にいらっしゃい。少し落ち着いたほうがいいわ」

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