王太子様の策略に、まんまと嵌められまして~一夜の過ち、一生の縁~

「失礼します」

侍女が用意したお茶が運ばれ、目の前にお茶を注いだカップが置かれる。

ふわりと甘い香りが辺りを漂った。

「さあ、飲んで。きっと心が落ち着くわ」

王妃様に勧められ、カップを手に取ると口へと運ぶ。

甘くほんのりと酸っぱい。

けれどとても美味しく、そして王妃様の言う通り心がゆっくりと落ち着きを取り戻していく。


「……さて、本題。ファリスとなにがあったの?」

王妃様は私がひと口飲んだのを確認してから、そう話を切り出した。


ドキリと一瞬心臓が跳ねた。

心配させないよう、こんなときは『なんでもない』と答えるのが正解なのだろうが、そのときの私は精一杯で、ぽつりぽつりと話し始める。

「実は。ファリス様に酷いことを言ってしまって……。本当は言うつもりではなかったのですが、毎日いっぱいいっぱいで、私の心の中に留めていたものが爆発してしまって、それで」

「ああ。それは仕方ないわ。私もそうだったけれど、慣れない環境で慣れないことをやらされるのだもの。爆発してもしょうがないわ。どうせファリスのこと、あなたを置いてけぼりにして、浮かれていたのね、きっと」

「正直、まだ自分自身のファリス様への気持ちが分からないのです。それにファリス様がたったあの一日……、ううん、あの一夜だけで私を好きになれるのかって疑問がずっとあって……。そんな早くに好きになれるものなのですか?」


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