王太子様の策略に、まんまと嵌められまして~一夜の過ち、一生の縁~
「ありがとうございます、王妃様。向き合ってみます、ファリス様と、……そして自分の心と」
「ええ。きっと答えは出るはず。その答えがいいものであると願っているわ。私が言うのもあれだけれど、ファリスはとてもいい子よ。たくさんの愛であなたを包んでくれるわ。きっと悲しい思いをさせることはないでしょう」
王妃様は自信ありげにそう言って、ニコリと笑う。
その笑みに、私もつられて微笑み返した。
気づけは、だいぶ時間が経っていた。
いいかげん部屋に戻らないとファリス様も心配するだろう。
気持ちを新たに席を立つ。
部屋を出る前に、どうしても王妃様に聞きたかったことを、思い切って投げかけた。
「あの、ひとつ聞いてもよろしいでしょうか」
「いいわよ、なあに?」
「王妃様は、今、幸せですか?」
その質問に、王妃様はキョトンとした顔を一瞬見せたが、すぐにいつもの笑みに戻る。
「もちろん。リューイの思いに最初は戸惑ったけれど、でもいつの間にかその思いが居心地が良くて、今ではそれなしでは生きられないほど幸せよ」