王太子様の策略に、まんまと嵌められまして~一夜の過ち、一生の縁~
ファリス様の鼓動が私の身体に伝わる。

その動きは、ドクドクと速い。
走ってきたからなのか、それとも……。

少しの間、ファリス様は私を抱きしめていた。
私は抗わず、素直に受け入れる。

むしろ自身の手を、ファリス様の背中に回した。

まさか私が背中に手を回すなどと思わなかったのだろう、ファリス様の身体が軽くビクリと反応したが、ファリス様はそのまま私を抱きしめていた。

自分でも驚く行動だった。

だって、無意識にその手を回していたから。


今までは恥ずかしかったり、戸惑ったりするばかりだったのに、どうして今はこんなに居心地が良く感じてしまうのだろう。

ほんの少し離れただけなのに。

ファリス様の姿を見たら、変に心臓が高鳴って身体が熱くなった。



……この感覚は、王妃様の最後の言葉と同じだわ。


初めは戸惑ったけれど、今では心地いい。



私もいつか。

それなしでは生きられなくなるのかしら……。
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